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キャベツの値段は、どこで変わるのか100kgでたどる、畑から売り場まで

公開 2026年10月28日

晴れた日の畑で、赤土の畝に並んで育つ、結球しはじめた緑色のキャベツ。人は写っていない。
畑で育つキャベツ(撮影地は不明)。記事で扱う統計の産地や農家の畑ではありません

生産者受取価格5,489円、店の値段10,770円(いずれもキャベツ100kgあたりの試算値)。その間で値段が農協・市場・仲卸・店でどう積み上がるのかを、農林水産省の調査からたどります。段階の差を利益とは扱えない理由と、受取価格と所得の違いも説明します。

店で手に取るキャベツには、値札が一枚ついているだけです。けれどもその値段は、畑を出てから売り場に並ぶまでに、いくつかの段階を通ってできあがっています。

農林水産省の調査には、キャベツについて、段階ごとの値段と、その間にかかった経費を並べた数字があります。この記事では、その数字を畑の側から一段ずつたどります。

Workerプラス編集長より

先にまとめると

  • 店の値段のうち、生産者受取価格は51.0%(2022年度の試算)
  • 市場から先の経費は費用と利益が混ざり、利益だけは分けられない
  • 受取価格は所得ではない。種や肥料、人件費などを引く前の値段

言葉と単位を、先にそろえます

この記事で使う言葉は、調査の言葉のままです。

言葉だれが、どこで受け取る値段か
生産者受取価格農家が、農協などの集出荷団体に出荷して受け取る値段
卸売価格卸売市場で、卸売業者が売る値段
仲卸価格仲卸業者が、小売店などに売る値段
小売価格店が、お客さんに売る値段
流通経費生産者受取価格から小売価格までの間に入る金額。運ぶ・預かる・取引する・並べる費用で、このうち卸売手数料・仲卸経費・小売経費には各段階の利益も含む

数字は、すべて「100kgあたり」でそろえます。調査がキャベツを100kgあたりで集計しているからで、100kgは比べるための単位です。1玉の重さは、規格や時期によって違います。たとえば山梨県の出荷規格では、10kgの箱にLなら8個(1個1,300〜1,700g)、2Lなら6個(1,700g以上)を詰めます。この記事の数字は、1玉の値段ではありません。

この数字は、何を測ったものか

もとにするのは、農林水産省「令和4年度 食品流通段階別価格形成調査(青果物調査)」です。対象は2022年4月から2023年3月までで、青果物ではこれが最新です。

数字を読む前に、二つのことを確かめておきます。一つは、これが同じキャベツの後を追いかけた記録ではないことです。農協などの集出荷団体、仲卸業者、小売業者のそれぞれに1年分の数字を聞き、「もし四つの段階を通ったら」と計算でつないだ試算値です。調査自身も「同一の品目の価格形成を流通段階ごとに追跡する調査ではなく」と書いています。

もう一つは、利益が分けられていないことです。調査は「卸売経費(卸売手数料)、仲卸経費及び小売経費は、各流通段階の業者の利潤等を含む」とだけ書いています。市場から先の段階の差額は、そのまま誰かのもうけではありません。費用と利益がひとまとめになった金額です。

キャベツ100kgの値段は、段階ごとにこう積み上がる(試算値)

キャベツ100kgあたりの値段の横棒グラフ(2022年度の試算値)。生産者受取価格5,489円、卸売価格7,747円、仲卸価格8,901円、小売価格10,770円と、段階ごとに積み上がる。卸売から先の段の差には費用と利益の両方が入り、利益だけは分けられない。100kgは統計の集計単位で、1玉の値段ではない。
※100kgは、統計が集計に使っている比較の単位。1玉の重さは規格や時期で違うため、1玉の値段ではない
※段階ごとに別々に集めた数字をつないだ試算値で、同じキャベツを追った記録ではない
※卸売から先の段の差(卸売手数料・仲卸経費・小売経費)には費用と各段階の利益の両方が入り、利益だけは分けられない
対象: キャベツ、4段階を通った場合、100kgあたり、2022年度(2022年4月〜2023年3月)/単位: 円(100kgあたり、消費税込み)/いずれも公表値(調査が計算した試算値)
出典: 農林水産省「令和4年度 食品流通段階別価格形成調査(青果物調査)」統計表 11-1(2026年2月6日の訂正後の数値)

小売価格10,770円の内訳(キャベツ100kgあたり、試算値)

キャベツ100kgあたりの小売価格10,770円の内訳の横棒グラフ(2022年度の試算値)。生産者受取価格5,489円(51.0%)、集出荷団体(農協など)の経費1,733円(16.1%)、卸売手数料525円(4.9%)、仲卸経費1,154円(10.7%)、小売経費1,869円(17.4%)。経費には費用と利益の両方が入り、利益だけは分けられない。
※生産者受取価格は手取りでも所得でもない。農家自身の選別・箱詰めの手間や資材費、種苗・肥料などの費用を引く前の値段
※卸売手数料・仲卸経費・小売経費には、費用と各段階の利益の両方が入る。利益だけは分けられない
※割合は端数処理により、合計が100%にならない
対象: キャベツ、4段階を通った場合、100kgあたり、2022年度(2022年4月〜2023年3月)/単位: 円(100kgあたり、消費税込み)と、小売価格に占める割合/いずれも公表値(調査が計算した試算値)
出典: 農林水産省「令和4年度 食品流通段階別価格形成調査(青果物調査)」統計表 11-1(2026年2月6日の訂正後の数値)

畑から農協へ ── 5,489円

生産者受取価格の5,489円は、卸売価格から、卸売手数料と農協などの経費を差し引いて計算されています。調査は、この値段に「生産者が集出荷団体に出荷するまでに要した選別、包装及び荷造労働費、包装・荷造材料費等の経費を含む」と書いています。農家が畑で外葉を落とし、玉をそろえて箱に詰める手間や、箱などの資材の代金は、この5,489円の中から出ていくということです。

その手間を、調査は別の形で見積もっています。農家が自分で選別・箱詰めをした場合の労働費は、100kgあたり809円です。実際に払った賃金ではなく、作業時間に賃金の単価を掛けた見積もりで、5,489円とは別の回答から計算されています。

受取価格と所得は、別のもの

生産者受取価格は、農家の手元に残るお金ではありません。そこから、種や苗、肥料、農薬、箱などの資材、機械の修理や燃料、雇った人の賃金といった費用を引いて、残ったものが農業所得です。

キャベツの所得を、同じ100kgあたりで示す公的な数字は見つかりませんでした。別の調査ですが、農林水産省「農業経営統計調査(営農類型別経営統計)」には、キャベツを主に作る経営の平均があります。2024年の、露地キャベツの販売が農産物の販売収入の8割以上を占める個人経営体(15経営体の平均、キャベツの作付は延べで平均約8.2ha)の、1経営体あたりの数字です。

項目(1経営体あたり、2024年)金額
農業粗収益約4,009万円
農業経営費約3,124万円
うち 荷造運賃手数料(箱代・運賃・出荷先への手数料)約834万円
うち 農薬衛生費約380万円
うち 減価償却費(機械・施設など)約307万円
うち 雇人費(雇った人の賃金など)約299万円
うち 肥料費約253万円
うち 種苗費約152万円
うち 動力光熱費(燃料・電気など)約130万円
農業所得約885万円

表の「うち」は主な費目だけです。ほかに農業雑支出・修繕費・地代・賃借料などがあります。

この平均では、粗収益のうち所得として残ったのは22.1%でした。ただし、この調査は売り上げを差し引き前でとらえ、箱代や運賃、出荷先に払う手数料も経費として数えています。年も、調べた相手も違うので、5,489円と組み合わせて「100kgあたりの所得」を計算することはできません。また、家族の働きは経費に入っていないため、この所得には家族が働いた分の報酬も含まれます。

農協から市場へ ── 一番大きいのは運賃

農協などが出荷と販売にかけた経費は、100kgあたり2,258円です。このうち卸売業者に払う手数料525円を除いた1,733円が、上の内訳の図の「集出荷団体(農協など)の経費」にあたります。

農協などが出荷と販売にかけた経費(キャベツ100kgあたり)

キャベツ100kgあたりの、農協など集出荷団体の出荷・販売の経費の横棒グラフ(2022年度)。出荷運送料・積込料1,202円が最も大きく、卸売手数料525円、予冷・検査などのその他の集出荷経費259円、上部団体の手数料・負担金・送金料などのその他の販売経費221円、包装・荷造の材料費51円、団体の選別・箱詰めの人件費1円未満(統計表では0円)。合計2,258円。
※合計 2,258円。このうち卸売手数料を除いた1,733円が、小売価格の内訳の図(FIG-0010)の「集出荷団体(農協など)の経費」にあたる
※「その他の集出荷経費」には集荷費・検査料・予冷費・保管料・事業管理費などがまとめて入る
※「その他の販売経費」は、上部団体の手数料・負担金・送金料など
※回答した団体は10。団体側の選別の人件費が1円未満でも、すべての産地で農家が選別しているとは言えない
対象: キャベツの集出荷団体(農協など、回答10団体)、2022年度(2022年4月〜2023年3月)/単位: 円(100kgあたり、消費税込み)/いずれも公表値
出典: 農林水産省「令和4年度 食品流通段階別価格形成調査(青果物調査)」統計表 1-1、調査の概要(用語の定義)

一番大きいのは、出荷運送料・積込料の1,202円で、2,258円の半分を超えます。重くてかさばる野菜を、産地から市場まで運ぶ費用です。予冷や検査の費用は、集荷費や保管料とまとめて「その他の集出荷経費」259円に入っていて、それだけを取り出すことはできません。

団体側の選別・箱詰めの人件費は1円未満(統計表では0円)でした。ただ、キャベツについて答えた団体は10だけなので、どこの産地でも選別は農家がしている、とまでは言えません。

市場で ── 卸売価格7,747円と、手数料525円

市場に出たキャベツは、卸売業者を通して、せりや相対の取引で売られます。その値段が卸売価格の7,747円です。調査で農協などが払った卸売手数料525円は、卸売価格の6.8%にあたります。

卸売市場の広い売り場を上から見た様子。青果の段ボール箱を並べた台の周りに、ヘルメットや帽子をかぶった人たちが集まっている。人は小さく、マスクをした人が多く、顔は判別しにくい。
2023年2月撮影。福岡市中央卸売市場(青果市場)のせりの様子。何の品目のせりかは分かりません写真: 慈姑鑑真 / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)、切り抜き・縮小

この手数料の決まり方は、二度変わっています。川崎市の説明によると、手数料の率はかつて国が全国の中央卸売市場で一律に定めていました。2004年の卸売市場法の改正を受けて全国で弾力化され、川崎市北部市場では2009年4月から、各卸売業者が率を自由に決められるようになりました。そのあと、2020年6月に施行された改正で、卸売業者は、委託手数料など出荷者が負担する費用の種類や額を公表することが義務になりました。たとえば川崎市北部市場のある卸売業者は、野菜の手数料を8.5%と公表しています。調査で実際に払われた割合と、公表された率が違う理由は、資料には書かれていません。

仲卸と店で ── 1,154円と1,869円

仲卸業者は、仕入れた値段の114.9%で売っています。その差の1,154円には、仕分けや配送の費用のほか、大手スーパーの物流センターの使用料が含まれる場合もある、と調査は説明しています。

仲卸から仕入れている小売店では、販売額が仕入れ額の121.0%で、仲卸価格との差は1,869円です。ここに、店の人件費や売り場の費用、売れ残りの分、そして利益が一緒に入っています。内訳は公表されていません。キャベツを扱う小売業者の仕入れ(金額)の60.3%は、市場の仲卸業者からでした。

スーパーの売り場に山積みにされた、丸ごとのキャベツ。奥はぼやけていて、値札や店名は写っていない。
2014年7月撮影。日本のスーパーの売り場のキャベツ(店名は不明)。記事で扱う統計の調査店舗ではありません写真: mrhayata / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)、切り抜き・縮小

季節で、どの段階も動く

ここまでは1年の平均です。月ごとに見ると、値段は大きく動きます。2025年の1kgあたりの値段を、東京都区部の店頭と、東京都の中央卸売市場の卸売で並べました(100kgの数字を100で割ると、1kgあたりになります。たとえば10,770円は約108円)。

2025年のキャベツ、店頭と卸売の月別の値段(1kgあたり)

2025年のキャベツの月別の値段の折れ線グラフ(1kgあたり)。店頭(東京都区部)は1月528円から下がり、9月158円が最も安い。卸売(東京都の中央卸売市場)は1月238円から6月72円まで下がり、その後は80〜90円台。2本の差は1月の290円から9月の69円まで、月によって違う。別々の調査なので、差は誰かの取り分ではない。
※卸売は東京都の中央卸売市場(全市場の計)の全取引、店頭は東京都区部の調査店舗の価格
※別々の調査を並べたもの。対象の店・取引も、調べ方も違うため、2本の線の差を誰かの取り分や利益とは読めない
※店頭は旬ごとの調査日の価格(短期間の特売は原則として調べない)、卸売はその月の全取引の平均
対象: 東京都区部の店頭・東京都の市場の卸売、2025年(1〜12月)/単位: 円/kg/いずれも公表値。差はNouManの計算
出典: 総務省統計局「小売物価統計調査(動向編)」キャベツ(東京都区部、2025年)、農林水産省「令和7年 青果物卸売市場調査」表1-3(東京都中央卸売市場計)

1月は店頭528円、卸売238円で、店頭は9月まで、卸売は6月まで下がりました。2本の差は、1月の290円から9月の69円まで、月によって違います。ただし、この2本は別々の調査です。対象の店や取引も、調べ方も違うので、差を誰かの取り分とは読めません。

この年の初めの高値について、農林水産省は2024年12月25日に、キャベツは「主産県において、8月から9月の高温、10月の天候不順の影響による歩留まりの低下に加え、12月の低温、干ばつの影響により小玉傾向」で、1月の出荷数量は平年を下回る、という見通しを出していました。

売り先で、費用の持ち主が変わる

調査には、農家が消費者に直接売った場合の試算もあります。販売価格は100kgあたり7,278円で、そのうち2,727円は農家自身が持つ販売経費です。四つの段階を通る場合とは、売った品物の規格や品質が同じとは限らず、受取価格に含める費用も違うため、どちらが得かは比べられません。言えるのは、直売では、途中の誰かが担っていた手間と費用を、農家が自分で持つということです。

加工・業務用の取引では、値段の決め方そのものが違います。農林水産省が掲載する契約取引のガイドラインは、運賃や物流容器の代金を買う側が持つ場合もあるため、その「価格」がどんな条件での価格かを明記する必要がある、と書いています。

値段が下がりすぎたときの支え

キャベツは、国の指定野菜価格安定制度の対象です。農畜産業振興機構の説明では、販売した野菜の平均販売価額が、平均価格の90%(保証基準額)を下回ったときに、保証基準額との差額を補てんします。対象は、指定産地で作り、登録出荷団体などを通じて、機構が定める卸売市場などへ出荷した分に限られます。基準になるのは店頭の値段ではなく、その卸売価格です。

NouManの読み解き事実を踏まえた、Workerプラス編集長の見方

この統計から見えるのは、店の値段の約半分が「流通経費」だということです。その中には、運ぶ・取引する・並べるための費用と、各段階の利益が一緒に入っています。内訳が分かる農協などの段階では、出荷と販売にかけた経費の中で、一番大きいのは運賃でした。同時に、生産者受取価格も、まだ多くの費用を引く前の値段です。自分の出荷を振り返るとき、出荷先の手数料や取引の条件は、卸売業者が公表しています。箱代や運賃を、だれが、どの段階で負担しているのかも、出荷の仕組みや売り先によって違います。

一方で、どの段階にどれだけの利益があるのかは、この統計では答えられません。段階の差をそのまま誰かの利益と見る前に、その差に何が入っているのかを確かめる。そこから見えてくるものがある、とNouManは読みました。

補足

この記事は、2026年10月28日時点の公開資料をもとにしています。最新情報は、各機関の公式サイト等でご確認ください。

出典

  • 令和4年度 食品流通段階別価格形成調査(青果物調査)調査の概要・調査結果の概要・統計表(2026年2月6日 正誤訂正後) 農林水産省(2026年10月25日確認) 資料を開く
  • 令和4年度 食品流通段階別価格形成調査(青果物調査)調査結果の概要 農林水産省(2026年10月25日確認) e-Stat(PDF)
  • 令和6年 農業経営統計調査(営農類型別経営統計)表3 個人経営体の品目別単一経営収支 農林水産省、2026年9月17日(2026年10月25日確認) e-Stat(Excel)
  • 令和6年 営農類型別経営統計 調査の概要(利用者のために) 農林水産省、2026年3月27日(2026年10月25日確認) e-Stat(PDF)
  • 令和7年 青果物卸売市場調査 表1-3(東京都中央卸売市場計) 農林水産省、2026年9月30日(2026年10月25日確認) e-Stat(Excel)
  • 小売物価統計調査(動向編)調査品目の月別価格 キャベツ(2025年) 総務省統計局、2026年4月24日(2026年10月25日確認) e-Stat(Excel)
  • 小売物価統計調査(動向編)調査の概要 総務省統計局(2026年10月25日確認) 資料を開く
  • 山梨県青果物標準出荷規格「キャベツ」 山梨県(2026年10月25日確認) PDF
  • 卸売委託手数料 川崎市(2026年10月25日確認) 資料を開く
  • 卸売市場法(e-Gov 法令検索) デジタル庁 e-Gov(2026年10月25日確認) 資料を開く
  • 卸売市場法関係法令三段表(施行規則 第5条) 農林水産省(2026年10月25日確認) PDF
  • 卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律の概要 農林水産省(2026年10月25日確認) PDF
  • 野菜の生育状況及び価格見通し(令和7年1月)について 農林水産省、2024年12月25日(2026年10月25日確認) 資料を開く
  • 加工・業務用野菜標準基本契約取引ガイドライン2023 農林水産省(委託事業。編集・発行: 一般社団法人日本施設園芸協会)(2026年10月25日確認) PDF
  • 指定野菜価格安定対策事業の概要 独立行政法人農畜産業振興機構(2026年10月25日確認) 資料を開く

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