企業を読み解く決算書の読み解き・ヤオコー編(全4回の第4回)

ヤオコーの売上8.1%増のうち、出店の分はどれくらい? ─ 全店と既存店の差、首都圏への出店、「センター等」の投資

公開 2026年10月18日

ヤオコーの売上は、この6年、既存店の伸びに毎年2〜5ポイントほど上乗せされる形で伸びてきました。2026年3月期は、客数×買上点数を目安にすると、売れた品の数の増加の多くが新しい店から来ていると読めます。7店のうち3店は東京都。2027年3月期の投資計画では「センター等」が2倍以上に増えます。

資料の対象時期: 2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)と2027年3月期の計画。全店と既存店の推移は2021年3月期から。ヤオコー単体

回1(第1回「ヤオコーは何で稼いでいる?」)で見たとおり、ヤオコーの2026年3月期の売上高は8.1%増えました。この伸びは、前からある店の伸びなのか、新しい店が増えた分なのか。この回は、全店と既存店の数字の差、どこに店を増やしているか、新しい店の規模、投資の中身から、買い手であるヤオコーの成長の仕方を読みます。数字はすべて事業会社ヤオコー単体のものです。

1.全店と既存店の差:毎年、出店の分が2〜5ポイント

公表されていること

ヤオコーの2026年3月期の売上高は、全店で8.1%増、既存店(以前から営業している店。比べる対象の店の基準は資料に書かれていません)で4.2%増でした。客数は、全店で5.1%増、既存店で1.3%増です。全店の一品単価は4.0%増、買上点数は1.2%減でした(既存店はそれぞれ3.9%増、1.0%減)。

全店と既存店の差(売上で3.9ポイント、客数で3.8ポイント)は、おおまかには新しい店の分の目安になります。6年分を並べると、次のとおりです。

年度(3月期)全店の売上既存店の売上差
2021年12.1%増9.1%増3.0ポイント
2022年5.8%増0.7%増5.1ポイント
2023年4.4%増1.7%増2.7ポイント
2024年9.8%増7.7%増2.1ポイント
2025年10.3%増6.0%増4.3ポイント
2026年8.1%増4.2%増3.9ポイント

差はNouManの計算です。ヤオコーの売上は毎年、既存店の伸びに、出店による2〜5ポイントほどが上乗せされる形で伸びています。既存店の伸びが小さかった年(2022年3月期の0.7%増など)は、出店の分が売上の伸びの大半を占めました。

ただし、この差は正確な分け方ではありません。どの店が「既存店」に入るかは会社の基準によりますが、その基準は今回の資料に書かれていないからです。差には、前の年に開いた店の分も含まれる可能性があります。

2.どこに店を増やしているか

公表されていること

ヤオコーの店の数は、2026年3月期に195店から202店になりました(出店7店、閉店0店)。2027年3月期は8店を出店し、閉店はなく、210店になる見込みです。

都県2025年3月末2026年3月末
埼玉県104店106店
群馬県17店17店
千葉県33店34店
栃木県6店6店
茨城県7店7店
神奈川県14店15店
東京都14店17店
合計195店202店

2026年3月期の7店のうち3店は東京都で(杉並区、板橋区、福生市)、杉並桃井店は東京23区で初めての店です。2027年3月期の出店計画には、神奈川県相模原市、埼玉県さいたま市(2店)、東京都八王子市、千葉県船橋市、埼玉県越谷市などの店が挙がっています。

有価証券報告書に載っているヤオコーの中期経営計画は、出店について「ドーナツエリアを中心とした出店継続」を掲げています(「ドーナツエリア」の範囲は、資料に説明がありません)。

3.新しい店の規模

公表されていること

2026年3月期に開いた7店の売場面積と、会社が見込む年間の売上(年商見込)は次のとおりです。

店所在地売場面積年商見込
杉並桃井店東京都杉並区1,686㎡30億円
松戸古ケ崎店千葉県松戸市1,840㎡18億円
まるひろ上尾SC店埼玉県上尾市2,381㎡29億円
岩槻本丸店埼玉県さいたま市2,518㎡25億円
板橋四葉店東京都板橋区1,463㎡20億円
福生牛浜店東京都福生市1,963㎡20億円
東戸塚店神奈川県横浜市1,798㎡24億円

年商見込は会社の見込みで、実績ではありません。7店を合わせると166億円です(NouManの計算)。売場面積は1,463〜2,518㎡で、東京23区の2店(杉並桃井店、板橋四葉店)は7店の中で売場面積が小さいほうです。

4.投資の中身:2027年3月期は「センター等」が2倍以上に

公表されていること

ヤオコーの設備投資は次のとおりです。

投資の区分2026年3月期(実績)2027年3月期(見込)
店の新規出店174億円143億円
既存店の活性化95億円55億円
その他(センター等)39億円86億円
合計308億円283億円

端数処理により、合計が一致しない場合があります。

2027年3月期(2026年4月〜2027年3月)の見込みでは、出店と既存店への投資が減る一方、「その他(センター等)」は39億円から86億円へ、2倍以上に増えます。ただし、「センター等」が何の施設なのか(物流センター、加工の施設など)は、資料に書かれていません。

回1で見たとおり、ヤオコーには「物流センター収入」という商品の売上以外の収入もあります。有価証券報告書はグループ全体の注記で、営業収入の「その他」を主に配送代行収入等と説明していますが、ヤオコー単体の物流センター収入との対応や、「センター等」の投資との関係は資料に書かれていません。

5.NouManの読み解き

NouManの読み解き

ヤオコーの売上の伸びは、既存店の伸びと出店の両方から来ています。全店と既存店の差は、この6年、毎年2〜5ポイントほどありました(目安)。2026年3月期の出店は、東京都が3店と最も多く、23区にも初めて店を開いています。店の数の半分以上が埼玉県にあるチェーンが、2026年3月期は東京都や神奈川県、千葉県にも店を増やしました(1年分の動きで、長い傾向かどうかはこの資料だけでは分かりません)。

全店と既存店の数字を並べると、売れた品の数の増え方にも違いが見えます。客数×買上点数を「売れた品の数」の目安とすると、既存店は約0.3%増、全店は約3.8%増です(NouManの計算)。2026年3月期にヤオコーで売れた品の数の増加は、主に店の数が増えた分から来ていると読めます。ただし、買上点数は指標化された数字で、実際の販売数量ではありません。

2027年3月期の投資計画では、出店や既存店への投資が減る一方、「その他(センター等)」は2倍以上に増えます。金額では、まだ店への投資(198億円)のほうが大きいものの、店以外のものへの投資を増やす計画であることは、数字から読み取れます。中身は分かりません。

6.生産者にとって

この分析から考えられるヒントを挙げます。どれも、ヤオコーが特定の地域や作物の取引先を求めているという意味ではありません。

  • 買い手の扱う量が増える経路を知る。 既存店で1回の買い物で買う点数が減る中、売れる品の数の増加は主に新しい店から来ていると読めます。買い手がどの地域に、どんな規模の店を増やしているかは、自分の作物がどの地域のお客さまに届きうるかを考える手がかりになります
  • 店が増えても、特定の品目の仕入れが増えるとは限らない。 出店の数から、品目ごとの仕入れの増減は分かりません。取引の可能性は、品目や時期、条件ごとに相手へ確認する必要があります
  • 自分たちの採算も合わせて考える。 遠い地域の店や、決まった納品先・時間に合わせる取引では、配送の費用や時間、荷姿の負担が増える場合もあります。販売価格だけでなく、届けるまでの費用を含めて考えることが大切です

この資料から分からないこと

  • 出店による売上の増加の正確な大きさ(全店と既存店の差は目安)
  • 新しい店の実際の売上(年商見込は会社の見込み)
  • 「センター等」の投資の中身と、ヤオコー単体の「物流センター収入」の中身
  • 中期経営計画の「1店舗平均売上高30億円」の計算の方法(今回は新しい店の見込みと比べていません)
  • 店が増えることで、どの品目の仕入れがどれだけ増えるか
  • 青果などの商品が、産地から店までどんな経路で運ばれているか

出典

  • 第1期 決算参考資料(2026年3月期 決算概要)6.店舗の状況、9.〔ヤオコー〕設備投資・減価償却の状況、11.売上・客数等の営業数値の状況 株式会社ブルーゾーンホールディングス(ヤオコーの持株会社)、2026年5月11日 公式IR「決算短信/決算参考資料」の一覧
  • 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) 添付資料 P.3(株式会社ヤオコーの項:出店・成長戦略) 株式会社ブルーゾーンホールディングス(ヤオコーの持株会社)、2026年5月11日 公式IR「決算短信/決算参考資料」の一覧
  • 有価証券報告書-第1期(2025/04/01-2026/03/31)中期経営計画の骨子(PDF p.9〜10)、連結財務諸表注記(収益認識関係、PDF p.90) 株式会社ブルーゾーンホールディングス(ヤオコーの持株会社)、2026年6月17日 公式IR「有価証券報告書/半期報告書」の一覧