企業を読み解く決算書の読み解き・ヤオコー編(全4回の第3回)

ヤオコーの惣菜は売上の15%、粗利の26% ─ 仕入れの数字と「作って売る」方針から、材料になる作物を考える

公開 2026年10月18日

ヤオコーの惣菜は、3年続けて売上の約15%、粗利の約26%を生んでいます。グループ全体(連結)の数字では、惣菜の売上100円あたりの仕入れは約49円で、ほかの部門の76〜81円より大幅に小さい。調理で価値を生む惣菜と、会社が掲げる「製造小売」の方針から、材料としての作物の価値を考えます。

資料の対象時期: 2024年3月期〜2026年3月期。部門別の売上と仕入れの比較は2026年3月期のグループ全体(連結)

回1(第1回「ヤオコーは何で稼いでいる?」)で、ヤオコーの惣菜(デリカ)は売上の約15%なのに、粗利では約4分の1を生んでいることが分かりました。この回は、その姿が一時的なものか、惣菜はどんな商売なのかを、3年分の推移と仕入れの数字、会社の方針から読みます。言葉の意味は、用語解説「ミールソリューション(毎日の食事の困りごとを助けること)」も参考にしてください。

1.3年間、惣菜の比重はほとんど変わっていない

公表されていること

ヤオコー単体のデリカ事業部の売上高と粗利率(売上総利益率)は、次のとおりです。

年度(3月期)惣菜の売上高売上の構成比粗利率粗利の概算
2024年777億円15.2%46.17%約359億円
2025年860億円15.2%46.08%約396億円
2026年932億円15.3%46.24%約431億円

粗利の概算は、売上高に粗利率を掛けたNouManの計算です。

惣菜の売上は2年で約20%増えました。ただ、会社全体の売上も同じ2年で約19%増えています(生鮮は約20%、グロッサリーは約19%)。惣菜だけが特に伸びて比重が増えたわけではなく、会社全体と同じくらいのペースで伸びています(NouManの計算)。

粗利率も3年とも46%台で、ほぼ一定です。同じように計算すると、会社全体の粗利のうち惣菜が占める割合は、3年とも約26%です。回1で見た「売上の15%で、粗利の4分の1」は、この年だけのことではなく、3年続いている姿だと分かります。

2.仕入れの数字から見る:惣菜は売上の半分ほどしか仕入れていない

惣菜の粗利率は、なぜ高いのでしょうか。手がかりになるのが、有価証券報告書に載っている部門別の売上と仕入れの数字です。

※この表はヤオコー単体ではなく、持株会社ブルーゾーンホールディングスのグループ全体(連結)の数字です。ヤオコーのほかに、エイヴイ、せんどうなどのスーパーを含みます(年度の途中から加わった会社は、加わった後の数か月分だけ)。部門の名前と範囲も、ヤオコー単体の資料(生鮮・グロッサリー・デリカの3部門)とは違います。

部門売上高仕入高売上100円あたりの仕入れ
生鮮食品2,639億円2,002億円約76円
デリカ食品1,017億円496億円約49円
加工食品2,176億円1,759億円約81円
日配食品1,762億円1,361億円約77円
住居関連241億円188億円約78円
合計7,834億円5,806億円約74円

売上100円あたりの仕入れは、仕入高を売上高で割ったNouManの計算です。端数処理により、合計が一致しない場合があります。

ほかの部門は、売上100円のうち76〜81円ほどが仕入れです。これに対して惣菜は、約49円です。惣菜は、仕入れた材料に、調理という手を加えて売る商品です。売上の残り半分ほどには、調理の手間など、店や工場で加えた価値が含まれていると考えられます。

ただし、仕入高は「その年に仕入れた額」で、売れた商品の原価(売上原価)とは在庫の増減の分だけずれます。また、惣菜に使う材料の一部が、ほかの部門の仕入れとして数えられているかどうかは、資料からは分かりません。さらに、惣菜の仕入れのうち、作物などの材料と、できあがった商品(外部で作られた惣菜など)の仕入れがそれぞれどれくらいかも分かりません。この「約49円」は、惣菜の材料費の正確な割合ではなく、目安です。

3.会社の方針:「作って売る」に踏み込む

公表されていること

決算短信によると、ヤオコーは、ほかと違う品揃えを実現するためにミールソリューションの充実に力を入れ、「バリューチェーン全体で競争優位を実現するため、製造小売業へ踏み込み、SPA型の商品開発の拡大」を図るとしています。プライベートブランド商品の磨き込みも挙げています。

有価証券報告書に載っているヤオコーの中期経営計画は、「店舗だけからサプライチェーン全体で価値を生み出すモデルへ」の転換を掲げ、重点施策に「SPA型商品開発によるカテゴリー強化」を挙げています。グループとしても、共通で強化する機能の一つに「製造」を挙げ、グループ内には食品の製造・加工・包装などの補助を行う会社(ヤオコーハーモニー)があります。

また、ヤオコーは会社のサイトで、生鮮や惣菜の商品を、お客さまが来店する時間に合わせて作っていると説明しています。

SPA型とは、一般に、商品の企画から製造、販売までを自社で手がける形のことです。ヤオコーがどの商品で、どこまでを自社で行うのかは、資料には書かれていません。

4.NouManの読み解き

NouManの読み解き

惣菜は、ヤオコー単体で、売上の割合以上に粗利を生む姿が3年続いている部門です。そして、グループ全体(連結)の数字では、売上のうち仕入れにあたる部分が、ほかの部門より大幅に小さい。範囲の違う二つの数字を組み合わせた読みですが、惣菜の高い粗利率は、材料に調理の手間を加えて価値を生んでいることの表れと読めます。

その手間の費用(人件費など)がどこに計上されているかは、会社によって違います。有価証券報告書のヤオコー単体の財務諸表には製造原価明細書があり、製造にかかる費用(労務費31億円を含む)が製品の原価として計算されていることは分かります。しかし、店での調理の人件費の扱いや、惣菜の部門での内訳は資料からは分かりません。

会社は、「作る」工程にさらに踏み込むとしています。この方針は惣菜に限らず、商品開発全体についてのものです。作物から見ると、価値が生まれるのは、店頭で丸ごと売られる場面だけではありません。作る側にとっての使いやすさ、たとえば下処理の手間、加工したときの歩留まり(使える部分の割合)、必要な時期と量のそろいやすさも、材料としての価値に関わると考えられます(小売・加工の一般的な見方で、ヤオコーの記述ではありません)。

5.生産者にとって

この分析から考えられるヒントを挙げます。どれも、ヤオコーが特定の作物や規格を求めているという意味ではありません。

  • 自分の作物が「材料になる場面」を想像する。 どんな料理に、どのくらいの量が、どの時期に使われそうか。店頭で丸ごと売られる場面とは、評価のされ方が違う場合があります
  • 加工・業務向けの取引は、店頭向けと求められるものが違うことがある。 見た目に加えて、大きさや歩留まり、量と時期の安定が重視される場合もあります。取引の形や条件は相手ごとに違うので、相手ごとの確認が必要です(用語解説「ミールソリューション(毎日の食事の困りごとを助けること)」の「選択肢として」も参考になります)
  • 自分たちの採算も合わせて考える。 加工向けでは、見た目の選別の負担が軽くなる場合がある一方、量や時期を約束する責任や、専用の荷姿・配送が必要になる場合もあります。販売価格だけでなく、作業・資材費・配送費や、量をそろえられなかったときの取り決めまで含めて、自分たちの採算を考えることが大切です

この資料から分からないこと

  • 惣菜を店で作っているのか、工場で作っているのか、その割合
  • 惣菜の仕入れのうち、作物などの材料と、できあがった商品の仕入れの割合
  • 店での調理の人件費が、粗利の計算(売上原価)と経費(販管費)のどちらに入っているか
  • 惣菜の材料をどこから、どのように仕入れているか(作物の産地や取引の形、条件)
  • SPA型の商品開発が、青果などの生鮮品を含むかどうか
  • 惣菜の部門だけの経費と最終的なもうけ
  • ヤオコー単体の部門別の仕入高(今回の仕入れの数字はグループ全体のもの)

出典

  • 第1期 決算参考資料(2026年3月期 決算概要)10.〔ヤオコー〕商品部別売上等の状況 株式会社ブルーゾーンホールディングス(ヤオコーの持株会社)、2026年5月11日 公式IR「決算短信/決算参考資料」の一覧
  • 有価証券報告書-第1期(2025/04/01-2026/03/31)販売及び仕入の実績(PDF p.19)、事業の内容(p.5)、中期経営計画の骨子(p.9〜10)、製造原価明細書(p.150) 株式会社ブルーゾーンホールディングス(ヤオコーの持株会社)、2026年6月17日 公式IR「有価証券報告書/半期報告書」の一覧
  • 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) 添付資料 P.2〜P.4 株式会社ブルーゾーンホールディングス(ヤオコーの持株会社)、2026年5月11日 公式IR「決算短信/決算参考資料」の一覧
  • ヤオコーとは(時点の表示なし) 株式会社ヤオコー(公式サイト)(2026年10月17日確認) 資料を開く