企業を読み解く決算書の読み解き・ヤオコー編(全4回の第1回)

ヤオコーは何で稼いでいる? 売上の3割が生鮮、粗利の4分の1が惣菜 ─ 決算資料から買い手の商売を読む

公開 2026年10月18日

ヤオコーの売上は約6,100億円。惣菜は売上の15%ほどですが、粗利では約4分の1を生んでいます。商品の粗利と会社全体の経費はどちらも1,600億円台で、人件費は経費の半分を超えて増えています。ヤオコー単体の数字から、買い手が仕入れ値だけでなく、売れる量や売れ残り、店での手間まで見ていると考えられる理由を読み解きます。

資料の対象時期: 2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)。ヤオコー単体

スーパーは、野菜をいくらで仕入れて、いくらで売っているのか。生産者にとって気になるのはそこですが、スーパーの商売は「仕入れ値と売値の差」だけでは成り立っていません。食品スーパーのヤオコー(持株会社はブルーゾーンホールディングス)が2026年5月に公表した決算資料から、売上・粗利・経費の関係を読み解き、買い手であるスーパーが商品をどう見ているかを考えます。

数字はすべて、持株会社ブルーゾーンホールディングスの決算資料に載っている、事業会社ヤオコー単体の2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)のものです。グループ全体(連結)の数字ではありません。

1.売上の全体像:6,100億円の内訳

公表されていること

ヤオコーの2026年3月期の売上高(商品の売上)は約6,100億円で、前の年より8.1%増えました。商品の部門別に見ると、次のとおりです。

部門売上高売上の構成比前の年からの伸び
生鮮1,921億円31.5%8.6%増
グロッサリー3,247億円53.2%7.8%増
デリカ(惣菜)932億円15.3%8.4%増
合計6,100億円100%8.1%増

グロッサリーは、一般には加工食品など、生鮮と惣菜以外の商品を指します(資料に部門の範囲の説明はありません)。売上の半分以上を占めます。生鮮は約3割、惣菜(デリカ)は約15%です。3部門とも、前の年から8%前後伸びています。

売上の伸びは、店の数が増えた分と、1品あたりの値段が上がった分を含みます。売れた量がそのまま8%増えたわけではありません(店の数と既存店の動きは、連載の別の回で扱います)。

2.売上と利益は違う:粗利で見ると、惣菜の重さが変わる

売上から、その商品の仕入れなどにかかった費用(売上原価)を引いた残りを「粗利」(売上総利益)といいます。売上高に対する粗利の割合が「粗利率」です。

公表されていること

資料には、部門ごとの粗利率が載っています。生鮮24.75%、グロッサリー23.04%、デリカ46.24%、全体で27.12%です。

この粗利率に売上高を掛けると、部門ごとの粗利のおおよその額が計算できます(NouManの計算)。

部門売上の構成比粗利率粗利の概算粗利の構成比
生鮮31.5%24.75%約475億円約29%
グロッサリー53.2%23.04%約748億円約45%
デリカ(惣菜)15.3%46.24%約431億円約26%
合計100%27.12%1,655億円100%

部門ごとの額は粗利率からの概算で、合計の行は有価証券報告書に載っている実際の粗利です。端数処理により、合計が一致しない場合があります。

惣菜は売上の15%ほどですが、粗利では約4分の1を生んでいます。売上の大きさだけで見ると目立たない部門が、粗利で見ると大きな役割を持っていることが分かります。

ただし、粗利は「最終的なもうけ」ではありません。惣菜は調理して作る商品なので、作る手間(人件費など)がかかります。資料には部門ごとの経費が載っていないので、惣菜が最終的にいちばんもうかる部門かどうかは分かりません。

3.粗利と経費の関係:会社全体で見ると

店を動かすには、人件費、家賃、電気代などの経費(販売費及び一般管理費、略して販管費)がかかります。販管費は、店の運営だけでなく、本部や物流なども含む会社全体の経費です。商品の販売だけにかかる費用ではありません。

公表されていること

ヤオコーの販管費は1,635億円で、売上高の26.8%にあたります。主な内訳は次のとおりです。

経費金額売上高に対する割合
人件費868億円14.2%
地代家賃165億円2.7%
減価償却費(店や設備への投資を年ごとに費用にしたもの)129億円2.1%
配送費122億円2.0%
水道光熱費77億円1.3%
広告宣伝費31億円0.5%
その他(ポイント引当金を含む)243億円4.0%
合計1,635億円26.8%

いちばん大きいのは人件費で、経費全体の半分を超えます。人件費は前の年より9.6%増え、売上の伸び(8.1%)を上回りました。決算短信は、時給を積極的に改定したことで、パートタイマーを中心に人の採用が進んでいると説明しています。

では、本業のもうけ(営業利益)はどう生まれているのでしょうか。会社全体の収入と経費を並べると、次のようになります。

項目金額内容
商品の粗利(売上総利益)1,655億円売上高6,100億円から売上原価4,445億円を引いた額
+ 営業収入(商品の売上以外の収入)274億円物流センター収入181億円、不動産賃貸収入69億円、その他23億円
- 販管費(会社全体の経費)1,635億円人件費、家賃、配送費など
= 営業利益(本業のもうけ)293億円営業収益6,374億円に対して4.6%

金額は億円に丸めています。端数処理により、合計が一致しない場合があります。

公表されていること

営業収益(6,374億円)は、商品の売上高(6,100億円)に営業収入(274億円)を加えたものです。営業収入の内訳は、有価証券報告書に載っているヤオコーの損益計算書で確認できます。

商品の粗利と販管費は、どちらも1,600億円台で近い規模です。そこに商品の売上以外の収入が加わり、営業利益が残る構造になっています。有価証券報告書は、グループ全体(連結)の注記で、営業収入のうち「その他(営業収入)」を「主に仕入先に代わり商品供給を行うことによる配送代行収入等」と説明しています。ただし、ヤオコー単体の「物流センター収入」とこの説明がどう対応するかは、資料には書かれていません。

4.NouManの読み解き:買い手は商品の何を見ているか

NouManの読み解き

ここからは、資料の数字と、小売業の一般的な仕組みを合わせたNouManの読み解きです。

粗利の「額」で見ている。 粗利率が高くても、売れる量が少なければ粗利の額は小さくなります。逆に、粗利率がそれほど高くなくても、多く売れる商品はたくさんの粗利を生みます。売上の半分を占めるグロッサリーが、粗利でも半分近くを生んでいるのはそのためです。買い手は、1つあたりの差額だけでなく、「その商品でどれだけの粗利額を積み上げられるか」を見ていると考えられます。

売れ残りは粗利を削る。 ヤオコーの粗利率は売上の27%ほどです。こうした商売では、値引きや廃棄が増えると、そのぶん粗利が減ります。決算短信は、循環型社会に向けた取り組みとして、節電やリサイクルと並べて廃棄の削減を挙げています。生鮮のように日持ちしにくい商品では、売り切れるかどうかが、仕入れ値に加えて、買い手の採算に関わります。

店での作業も費用になる。 経費の半分以上が人件費で、しかも増えています。決算短信は、AIによる需要予測に基づく自動発注(グロッサリー商品が対象)や、フルセルフレジ、電子棚札など、生産性を高めるための取り組みを挙げています。商品を店に並べるまでの手間(下処理、袋詰め、値付け、陳列)が少ないかどうかも、その商品の「もうけ」に関わると考えられます。

加工・調理される場面にも価値がある。 惣菜は売上の割合以上に粗利を生む部門です。ヤオコーは会社のサイトで、惣菜などの商品を、お客さまの来店する時間に合わせて作っていると説明しています。店頭で丸ごと売られる野菜だけでなく、惣菜の材料として使われる場面でも、作物は買い手の粗利を支えていると考えられます。

5.生産者にとって

この分析から、自分の作物が買い手にとってどんな価値を持つかを考えるヒントを挙げます。どれも、ヤオコーが特定の作物や規格を求めているという意味ではありません。

  • 自分の作物は、売り場でどんな役割の品か。 よく売れて粗利の額を積み上げる品なのか、時期や特徴で売り場に変化をつける品なのか、惣菜の材料になる品なのか。役割によって、買い手が重視する点は変わりそうです
  • 値段のほかに、買い手の採算に関わる点がある。 日持ちや鮮度の持ち(売れ残りにくさ)、店での下処理や袋詰めの手間、売り切れる量。こうした点は、仕入れ値に加えて、買い手の粗利と経費に関わります
  • 加工・調理の場面からも考えられる。 惣菜や加工で使われるとき、作物の価値は見た目だけでは決まりません(用語解説「ミールソリューション(毎日の食事の困りごとを助けること)」も参考になります)
  • 自分たちの採算も合わせて考える。 買い手の作業を減らすために、生産者側の選別・袋詰めなどの負担が増える場合もあります。販売価格だけでなく、追加の作業や資材費・配送費を含めて、自分たちの採算を考えることが大切です

ヤオコー単体の数字を読むと、商品の粗利と会社全体の経費が近い規模で、人件費が経費の半分を超えて増えていることが分かります。買い手が仕入れ値だけでなく、売れる量や売れ残り、店での手間まで含めて商品を見ていると考えられる理由が、この数字から少し見えてきます。

この資料から分からないこと

  • 部門ごとの経費と、部門ごとの最終的なもうけ(惣菜の調理にかかる人件費などは、部門別に示されていません)
  • 品目ごと(野菜の種類ごと)の売上や粗利
  • 粗利率の中に、値引きや廃棄の影響がどう含まれているか
  • ヤオコー単体の「物流センター収入」と、連結の注記の「配送代行収入等」がどう対応するか
  • ほかのスーパーと比べて高いか低いか(この記事では比較していません)

出典

  • 第1期 決算参考資料(2026年3月期 決算概要)7.〔ヤオコー〕業績の推移、8.販売費・一般管理費の状況、10.商品部別売上等の状況 株式会社ブルーゾーンホールディングス(ヤオコーの持株会社)、2026年5月11日 公式IR「決算短信/決算参考資料」の一覧
  • 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) 添付資料 P.3(株式会社ヤオコーの項:運営戦略・育成戦略) 株式会社ブルーゾーンホールディングス、2026年5月11日 公式IR「決算短信/決算参考資料」の一覧
  • 有価証券報告書-第1期(2025/04/01-2026/03/31)(株式会社ヤオコー)損益計算書(PDF p.149)、連結財務諸表注記(収益認識関係、PDF p.90) 株式会社ブルーゾーンホールディングス、2026年6月17日 公式IR「有価証券報告書/半期報告書」の一覧
  • ヤオコーとは(時点の表示なし) 株式会社ヤオコー(公式サイト)(2026年10月17日確認) 資料を開く