企業を読み解く

不便な場所に「行きたい理由」をどうつくるかバルニバービが組み合わせる、元からある景色・建物・食材

公開 2026年10月19日

イメージ写真。夕方の光が差す、海に面した広いテラス。手すりの向こうに海と波が見え、テラスには植木鉢とソファが置かれている。人や看板は写っていない。
海辺のテラスのイメージ。記事で紹介する淡路島の店やバルニバービの店舗ではありません(写真: César O'neill / Pexels)

一般には好立地とされない場所に店を出してきたバルニバービ。東京・小石川の印刷工場跡と、淡路島西海岸の海辺の2つの事例から、元からあった木・建物・海・夕日・校舎・島の食材を、料理や過ごす時間とどう組み合わせて「行きたい理由」をつくろうとしているのかを読みます。農家カフェ・農家レストランで、自分の畑や季節を見直すための材料として。

資料の対象時期: 統合報告書2022(2022年10月)、2026年7月期 決算説明資料(2026年9月)、公式サイト(2026年10月18日に確認)、神戸新聞(2021年7月)

店を出すなら、人通りの多い場所を選ぶ。飲食の世界では、それが常識だと言われます。ところが、一般には好立地とされない場所にあえて店を出し、そこへ人が足を運ぶ理由をつくろうとしてきた会社があります。カフェやレストランを全国で営む、株式会社バルニバービです。

この記事は、農家カフェ・農家レストランなど、自分の畑や地域で人を迎えている、あるいは迎えたいと考えている生産者に向けて書きました。おいしさ、立地、価格を一つずつ比べるのではなく、料理・空間・景色・地域・過ごす時間をどう組み合わせると、「その場所を目的に行きたい」と思ってもらえるのか。同社の2つの事例から、元からあった場所や資源をどう捉え直し、組み合わせたのかを読みます。

先にまとめると

  • バルニバービは、一般には好立地とされない場所のうち、街並み・水辺・公園など周りの環境に恵まれた場所を「バッドロケーション」と呼び、店を出してきました。会社は自社の開発を「人の流れをつくる開発」と説明しています
  • 東京・小石川の店は、印刷工場の跡でした。象徴になる大きな木を残し、室外機置き場だった2階を、噴水を囲む庭のテラスに変えています。会社によると、近くの学生や主婦層などに、昼から夜まで違う目的で使われている店です
  • 兵庫・淡路島の西海岸では、手入れのされていない海岸地を整地し、夕日を望む大きなレストランを開き、続けて宿泊施設、BBQ場、島の食材を使う店、閉校した小学校を生かした施設などを順に加えてきました。遠くから目的にして来て、泊まって過ごせる場所です
  • 2つの事例に共通するのは、元からあった木・建物・海・夕日・校舎・島の食材を生かし、そこへ新しい空間・料理・過ごし方を重ねていることだと読めます(NouManの読み解き)
  • ただし、こうした組み合わせで「どれだけ人が来るようになったか」を裏付ける数字は、公開資料では限られます。会社は、家賃の安さや競合の少なさも、この場所を選ぶ特徴として挙げています
  • なお、いまの同社の売上の中心は、不動産会社などが開発した場所に出した店です。人通りの少ない場所などの「バッドロケーション」の店は売上の約4分の1で、店の数は3年で29店から25店に減っています(減った理由は資料に書かれていません)
  • 伝えたいのは、「不便な場所でも必ずうまくいく」ことではありません。立地などの条件の不利だけで可能性を閉じず、「行きたい理由」をつくるという発想です

この記事での書き分け

この記事では、次の3つを分けて書きます。

種類内容
観察できる取り組み店や地域で実際に行われていること(会社の資料・公式サイト・報道で確かめたもの)
会社の説明会社が述べている考えや意図
効果の裏付け人が来るようになったことを示す数字や第三者の情報

生産者への示唆は、最後の節で NouManの提案として、同社の事実とは分けて書きます。

1.「悪い立地」を、会社はどう見ているか

公表されていること

バルニバービは「統合報告書2022」で、バッドロケーションを次のように説明しています。

「一般的な外食事業者の観点では注目してこなかった好立地とはいえない場所ではあるけれども、当社の視点でみると人々をほっとさせるような街並み、水辺、公園等、周辺環境に恵まれた絶好の飲食店としてのロケーション」

そして、自社の開発を「人の流れの中に店舗を開発するのではなく、『人の流れをつくる開発』」だとしています。店のコンセプトやデザインは、周りの環境に合わせて一つずつ考え、店名のロゴ、メニュー、Webサイトなども店ごとにすべて違う、と説明しています。

一方で、同じ報告書は、バッドロケーションの特徴として「店舗家賃等が低水準であること、競合店舗が少ないこと」を挙げ、戦略そのものを「競合店との競争を避けながら店舗網を拡大していく戦略」と説明しています。

会社は、1号店から「人もまばらな問屋街」の倉庫を自ら改装して始めたと振り返っています。また、2001〜2003年に「マニュアル・均一化したチェーン展開」で業績が不振になり、その後、店ごとの「オリジナルな店づくり」に戻ったとも書いています。どちらも会社自身の振り返りです。

つまり、会社の説明では、場所の魅力を見つけて生かすことと、家賃や競合の面での有利さの両方が、この戦略の中にあります。どちらか一方だけで説明する資料にはなっていません。

2.事例1 東京・小石川:印刷工場の跡と、一本の大きな木

公表されていること

元の場所: 住宅と町工場が並ぶ地域にある、印刷工場の跡。会社の資料は、飲食店を出すには「店前通行量が少ない場所」だったと書いています。

手を加えたこと(統合報告書2022の事例紹介):

  • 施設の象徴になる大きな木を残して、建物をまるごと改装した
  • 改装前は室外機の置き場だった2階を、噴水を囲む緑の多いガーデンテラスにした
  • ガーデンピッツェリア「青いナポリ」として開いた

いまの店(同社の公式サイト、2026年10月18日に確認): 本場イタリアの薪の窯で焼くナポリピッツァと、旬の素材を使ったイタリア料理の店です。噴水と緑に囲まれた50坪のガーデンテラスがあり、夜はライトアップされます。席は134席(店内92席、テラス42席)で、20席の個室もあります。最寄りの駅から歩いて10分ほどです。

会社は、この店が「近隣の学生や主婦層などを取り込み、ランチ、カフェ、ディナー、パーティーと幅広い用途で利用されています」と説明しています。来店者の数や、その変化の数字は示されていません。

NouManの読み解き

この事例で目を引くのは、建物の「裏側」だった場所を、店の見せ場の一つにしていることです。室外機置き場は、ふつうは人の目に触れないところです。そこを噴水と緑のテラスにし、元からあった大きな木を残して、店の顔にしています。

もう一つは、一つの用途に絞っていないことです。昼の食事、お茶、夜の食事、集まりと、近くの人が、同じ場所に何度も違う目的で来られるようにしています。人通りに頼れない場所では、近くの人に繰り返し来てもらうことが大切になると考えられます(会社の説明からのNouManの読み取りで、効果の裏付けはありません)。

なお、ここで料理として出しているのはナポリのピッツァで、その土地の食材を売りにしているわけではありません。元からある木や建物は、料理ではなく空間として生かされています。

3.事例2 淡路島西海岸:夕日の海、閉校した小学校、島の食材

公表されていること

元の場所: 会社の資料によると、開発前は「なんの手入れもされていない閑散とした海岸地」でした。淡路島の西側の海沿いで、瀬戸内海に沈む夕日を望む場所です。会社はこの一帯の開発を「Frogs FARM(フロッグス・ファーム)」と名付け、海岸地を「整地」して、店を「一から開発」したと説明しています。

順に加えてきたもの(会社の統合報告書・決算説明資料・公式サイト):

  • 島の西岸を走る海沿いの道(サンセットライン)沿いの約400mを開発の場所とし(2022年の統合報告書の説明)、2019年4月、その最初の店として、地域の中心になる店(旗艦店)のレストラン「GARB COSTA ORANGE」を開業。会社は「淡路島の特産物を使用した上質な料理により、淡路島にしか無いものを提供する」と説明しています。席は305席で、そのうち190席がテラス席です(2階店内115席、2階テラス120席、3階テラス70席。テラス席の合計はNouManの計算)
  • 翌年、プールとサウナのある宿泊施設「KAMOME SLOW HOTEL」。公式サイトは「“何もしないことを楽しむ旅”」と紹介しています
  • ピクニックやBBQのできる「PICNIC GARDEN」、島のパンの店、地元の水産会社と共同で運営する回転すし、淡路の素材を使う中華そば、淡路のたまねぎ料理を売りにする食堂など
  • 閉校した淡路市立尾崎小学校の跡を、食・アート・学びの施設「SAKIA(サキア)」として再開発。多目的ホールを大食堂に改装しました。2024年に宿泊の設備を加え、いまは2階がサウナつきの宿泊フロアです。地域の祭り(サキア祭)も開いています

会社の区分では、淡路島西海岸は、小石川の店のようなレストラン事業の「バッドロケーション」ではなく、不動産を持って地域を開発する「エステートビルドアップ(EB)事業」に入ります。会社は、バッドロケーションの出店で培ったノウハウを基にした開発だと説明しています。

晴れた日の、門の閉じた校門と、その奥の3階建ての校舎。屋根の中央に時計塔がある。門柱に校名の板があり、左にヤシの木とフェンスが見える。人は写っていない。
2014年10月撮影。閉校(2014年3月)の後の、旧淡路市立尾崎小学校の校門と校舎写真: KishujiRapid / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)、縮小・圧縮
冬の晴れた日の、3階建ての校舎。屋根の中央に時計塔がある。1階の前にテラス席のいすと机が並び、手前は駐車場で車が3台止まっている。人は写っていない。
2024年2月撮影。旧淡路市立尾崎小学校の校舎を再開発した複合施設「SAKIA」(兵庫県淡路市尾崎)。校舎の正面と、1階の前のテラス席写真: Asturio Cantabrio / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)、縮小・圧縮

2枚は、撮影した人・年・位置が違う別々の写真です。同じ構図で改装の前と後を比べたものではありません。

会社は、地域の開発を「レストラン旗艦店」から始め、次に「宿泊施設」、その後にほかの店や施設を加える順番で進めると説明しています。宿泊施設については「その地方にせっかく魅力的なコンテンツが豊富にあったとしても、滞在できる手段がなければ、ゆっくりと楽しむことができません」と書いています。会社の決算説明資料には、この一帯(Frogs FARM ATMOSPHERE)について「年間38万人が訪れる」という記載もあります。ただ、どの年の、どの範囲を数えた数字かが示されていないため、この記事では、人が来るようになった効果を示す数字としては使いません。

地域の変化について、地元紙の神戸新聞は2021年7月、次のように報じています。淡路島の西岸は、地元の人が長く「西浦」と呼んできた農業・漁業の集落の地域で、近年は若い世代を中心に「西海岸」という呼び名が定着してきた。それには、播磨灘の夕日を売りにする島外資本の観光施設が相次いで進出し、地域の魅力が再発見されたことが大きい。この記事にはバルニバービの名前は出てこず、先に進出した別の企業(パソナグループ)の施設が呼び水になって、大阪などからの出店や地元の業者の開業が続いたと書いています。また、淡路市によると、市内で起業する人への補助の申請は2020年度に18件で、事業を始めた2013年度の3倍を超えたとし、市の商工観光の担当者の「西海岸で急増しているのは間違いない」という談話を伝えています(起業・開業についての談話です)。一方で、急な開発に伴って、県道沿いの渋滞や違法駐車への住民の苦情も出ていたと伝えています。

NouManの読み解き

この事例は、小石川よりも大きな単位で「行きたい理由」を組み立てています。

  • 元からあったもの: 海、夕日、島の食材、閉校した小学校の校舎
  • 組み合わせ方: 海に向いた大きなテラスの席。島の特産物を使う料理。泊まって朝と夕方を過ごせる宿。BBQやパン、すしなど、何度来ても違う過ごし方ができる店。校舎の面影を残した集まりの場と、地域の祭り
  • 順番: まず人が目的にして来るレストランを一つ。次に、ゆっくり過ごせるように泊まる場所。そのあとで店を増やす

夕日は誰のものでもなく、昔からそこにあったものです。島の食材も、校舎もそうです。それらを「料理を食べる時間」「泊まって過ごす時間」と組み合わせて、遠くから島の西側まで行く理由にしようとしている、と読めます。小石川と違い、ここでは島の特産物を使う料理そのものが「淡路島にしか無いもの」として前に出ています。

ただし、地域の変化は、この会社だけでつくられたものではありません。報道は、ほかの企業や地元の人の開業が重なってきたことを伝えています。2021年の時点で、渋滞のような地域の負担も生まれていました。

4.2つの事例に共通する組み合わせ方

NouManの読み解き

2つの事例から、NouManは次の共通点を読み取りました。

  1. 元からあるものを生かす向きに、新しいものを置く。 大きな木、工場の建物、海と夕日、校舎、島の食材。新しくつくったテラスや建物も、元からあったものを見せたり、味わったりする向きに置かれています。新しいものが、元からあるものを見せる役目を担っている、と読めます
  2. 料理だけ、景色だけで勝負しない。 料理・空間・景色・地域の素材・過ごす時間が、一つの体験として重ねられています。おいしさや価格が関係ないという意味ではありません。それに加えて「そこでしか過ごせない時間」がある、ということです。ただし、料理の役割は2つの事例で違います。小石川では元からあるものを空間で生かし、淡路島では料理でも生かしています。組み合わせ方は一つではありません
  3. 繰り返し来る理由、長くいる理由をつくる。 ただし中身は違います。小石川は、近くの人(会社の説明では、学生や主婦層など)が、昼・お茶・夜・集まりと違う目的で何度も使える店です。淡路島は、遠くから目的にして来た人が、泊まったり店を回ったりして長くいられる場所です。近くの人に通ってもらう理由と、遠くから来てもらう理由とでは、必要な人手や設備も違います
  4. 一度に全部つくらず、順に重ねる。 淡路島では、レストラン、宿泊、ほかの店の順に、数年をかけて広げています

一方で、これらはこの会社だからできた面もあります。会社は、自社で店をデザインする部門を持ち、店の運営を任せる子会社の仕組みがあると説明しています。淡路島の開発では、ファンドや不動産の特別目的会社(SPC)を使って資金を集める仕組みもあると説明しています。また、家賃が低く競合が少ないことも、この場所を選ぶ特徴として挙げています。同じことを、そのまま別の現場で行えるとは限りません。

5.数字で確かめられること、確かめられないこと

公表されていること

2026年7月期の決算説明資料によると、レストラン事業のうち、バッドロケーションの店の売上は約35億円(3,524百万円)で、グループ全体(連結)の売上高15,085百万円の23.4%です。売上の中心は、不動産会社などの開発エリアに出した店(約68億円、6,753百万円、44.8%)です。バッドロケーションの店の数は、2023年7月末の29店から、2026年7月末には25店になっています。小石川の店は、2022年の統合報告書でバッドロケーション戦略の事例として紹介された店です(2026年時点の区分は資料で確かめられていません)。淡路島西海岸は、この区分に入りません(EB事業)。小石川の店はこの区分に入り、淡路島西海岸は入りません(EB事業)。

会社は、店の段階の利益である「貢献利益」を、立地の区分ごとに示しています(一般に、店の売上からその店にかかった費用を引いた利益を指します。会社は、店の損益を見るための管理会計の値で、決算の数字とは異なると注記しており、詳しい定義は示していません)。2026年7月期のレストラン事業の4つの立地区分では、バッドロケーションの貢献利益率(売上に対する貢献利益の割合)は15.8%で、ほかの3区分(13.3%〜16.7%)と大きな差はありません。淡路島西海岸の「Frogs FARM(淡路)」の区分(EB事業)は、別に7.5%と示されています(南あわじなど、ほかのEB事業の地域は別の区分です)。

この数字から言えるのは、バッドロケーションの区分全体では、店の段階の利益が出ており、2026年7月期については、その率がほかの区分と大きく変わらない、ということまでです(2025年7月期以前は、行政・公共機関の区分のほうが高い年もありました)。ほかの立地より有利だとも、不利だとも言えません。店の数が減った理由(閉店か、ほかの区分への移し替えか)は、資料に書かれていません。また、店ごとの来店者数やその変化、景色・空間・料理のどれがどれだけ来店に効いたかは、公開資料には示されていません。

6.生産者にとって:「行きたい理由」を自分の場所で考える

ここからは、NouManからの提案です。バルニバービが畑や農家について何か述べているわけではありません。

農家カフェや農家レストランは、駅から遠く、人通りの少ない場所にあることも少なくありません。条件だけを見れば、不利と言われる場所です。小石川や淡路島の事例は、その不利だけで可能性を閉じず、「その場所に行きたい理由」を組み立てる、という見方のヒントになると考えます。

  • 元からあるものを書き出してみる。 畑の景色、季節ごとに変わる作物の姿、収穫の時期、作業小屋や古い納屋、地域の食べ方、遠くの山や夕日。自分には当たり前のものでも、訪れる人にとっては、ほかでは過ごせない時間の材料になるかもしれません。小石川の店で室外機置き場がテラスになったように、自分では「裏側」だと思っている作業場や畑の端が、見せ場になることもあるかもしれません
  • 畑と季節を、料理と過ごし方に重ねられるか考える。 いま畑にあるものを、その日の料理に使う。料理の前後に畑を見る。季節ごとに来る理由が変わる。こうした組み合わせが、来訪の理由になりうるかどうかです。生産者は、淡路島の店のように料理の素材として、小石川の店のように空間や景色として、畑を両方の形で生かせる立場にあるとも言えます
  • 生産者との会話も、来訪の理由になりうる。 作物の育て方、今年の天候、おいしい食べ方を作り手から直接聞けることは、店だけの飲食店にはない体験です。ただし、会話の時間をどこまでとれるかは、作業の忙しさとの兼ね合いになります
  • 来てほしいのが近くの人か、遠くの人かを考える。 近くの人に通ってもらうなら、小石川の事例のように、昼・お茶・集まりなど使い方を広げる。遠くから来てもらうなら、淡路島のように、季節や時間帯で違う過ごし方や、長くいられる理由を用意する。どちらも、自分の規模と人手で続けられる形を選ぶことが前提です
  • 一度に全部そろえない。 淡路島の順番(まず目的になる一つ、次に長くいられる手段)のように、続けられる一つから始めて、様子を見て重ねる考え方もあります
  • 条件と負担、採算も合わせて見る。 同社の事例には、デザインの専門部門、運営の人手、資金、年単位の時間がありました。地域に人が増えれば、駐車場や道路の混雑、近所の暮らしへの影響も生まれます。来訪の理由をつくるための設備・人手・時間にかかる費用を、客数と単価で取り戻せるかは、別に計算しておく必要があります。同社が挙げた「家賃の安さ」は、自分の土地で営む農家と重なる面がありますが、デザインの専門部門や外部の資金のように、重ならない面もあります

おいしさや価格、通いやすさが関係ないわけではありません。ただ、通いにくさのように変えにくい条件があっても、それだけで可能性を閉じず、ほかの要素と組み合わせて「行きたい理由」をつくれないかを考える。この記事から持ち帰ってほしいのは、その見方です。

自分の作物を飲食店や宿に卸している生産者にとっても、見え方が変わる点があります。淡路島の店について、会社は、島の特産物を使った料理で「淡路島にしか無いもの」を提供すると説明しています。自分の作物が、どこかの店で、景色や地域の話と一緒にどう紹介されているか。取引先に聞いてみると、作物の新しい価値の伝え方が見つかるかもしれません。(淡路島の店が、どの生産者からどんな条件で食材を仕入れているかは、公開資料には書かれていません。)

補足

この記事は、同社の公開資料(統合報告書・決算説明資料・公式サイト)と報道をもとに、店や地域の組み立て方を読み解いたものです。店ごとの来店者数や採算は公開資料に示されていないため、取り組みの効果を測ることはしていません。

出典

  • 統合報告書2022 第1編 バルニバービが想う“人々と食の未来”(p.5〜14) 株式会社バルニバービ、2022年10月 公式IR(PDF)
  • 統合報告書2022 第4編 事業別の取り組み状況(p.37〜42) 株式会社バルニバービ、2022年10月 公式IR(PDF)
  • 2026年7月期 決算説明資料(p.4、p.7、p.10、p.11、p.18、p.32) 株式会社バルニバービ、2026年9月19日 公式IR「説明会資料」の一覧
  • ブランド&サービス: AOI NAPOLI(小石川)、GARB COSTA ORANGE、Frogs FARM ATMOSPHERE、SAKIA(2026-10-18 に確認) 株式会社バルニバービ、2026年10月18日 公式サイト「全ての施設」
  • 「西浦」改め「西海岸」!? 淡路島の農漁村エリアがおしゃれリゾート地に進化中 神戸新聞NEXT、2021年7月28日 神戸新聞NEXT
  • 旧尾崎小を食、芸術拠点に 大阪・飲食店運営会社が購入へ(写真の説明「閉校(2014年3月)」の出典) 神戸新聞NEXT、2021年2月27日 神戸新聞NEXT

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